健康コラム
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「むせ」ってなに? ~誤嚥について~(リハビリテーション科)
2016.06.22
食事をしていて「よくむせる」といった経験はありませんか?
それは「摂食・嚥下障害」の1症状かもしれません。
●「摂食・嚥下障害」とは?
簡単に言うと、「摂食」とは「食べること」を、「嚥下」とは「口に入れた飲食物を胃まで送り込むこと・飲み込むこと」をあらわします。つまり、「摂食・嚥下障害」とは、「摂食・嚥下」が「障害」されている、すなわち「食べること・飲み込むことが困難になった状態」ということになります。
「摂食・嚥下」は、「栄養をとる」という意味で生命に直結する重要な行為であるとともに、人間が感じる「楽しみ」の中で欠かせない要素となっています。そのため、摂食・嚥下が困難になるということは、身体面だけでなく精神面にも大きく影響することがあります。
●「摂食・嚥下」の流れ
ここで、「摂食・嚥下」がどの様に行われるかを順を追って説明しましょう。
- これは食べ物だ!と認識する
食べ物を見る・匂いを嗅ぐ・触る・音を聞くなど様々な感覚を使って、「これは食べ物である」「一口はこの位の大きさで食べられる」「これはお箸を使って食べよう」等、脳の中で判断します。 - 食べ物を口に運び、取り込み、咀嚼する
1.で判断した様に、一口で食べられる量を口に取り込みます。そして、飲み込みやすい形になるように、歯・顎・舌などが動き、食べ物を咀嚼(噛むこと)します。 - 食べ物の送り込み開始
飲み込みやすい形になった食べ物は、舌の動きで口の奥へ移動されます。同時に、鼻と口の間にある壁(軟口蓋:なんこうがい)が動き、鼻へ食べ物が行かないように鼻と口の間をふさぎます。 - 食べ物、口から食道へ移動 喉(喉頭:こうとう)が上前方へ動き、食べ物を口から食道へ送り込まれ始めます。この時、食道と隣り合う気管に食物が入らないように、気管に蓋(喉頭蓋:こうとうがい)がされます。よく飲み込む動きを“ごっくん”という擬音で表されますが、それは主にこの動きを指します。この動きは、無意識に行われる動きであり、医学的には“嚥下反射(えんげはんしゃ)”とよばれます。これらの動きは同時に食べ物が通る食道の入り口も広げる働きをしており、それによって食べ物はスムーズに食道へ送り込まれるのです。
- 食べ物、食道から胃へ移動
食道へ送り込まれた食べ物は、食道の筋肉の動きと重力により胃へ送り込まれます。
●「むせる」とは?
冒頭にも書きましたが、「摂食・嚥下障害」の1症状として、「よくむせる」ということがあります。では「むせる」とはどういう状態でしょうか。
「むせる」とは、食べ物や唾液(だえき:つばのこと)が、食道ではなく隣の気管に入ることで、気管が刺激され咳がでることをいいます。 また飲食物が気管に入ることを、医学用語では「誤嚥(ごえん)」と言います。
●「誤嚥(ごえん)」と「誤飲(ごいん)」
「誤嚥」とよく似た言葉に「誤飲」があります。よく似ている言葉で、間違いやすいですが、意味が全く違うのです。「誤飲」は「食物以外の物を誤って口から摂取すること」を指します。赤ちゃんが煙草の吸い殻を食べてしまう・・・よく耳にする事故かと思いますが、これは「誤飲」となります。
●「誤嚥」が引き起こすもの ~「誤嚥性肺炎」~
「誤嚥」し、「むせ」が起こっても気管に入った食べ物・唾液を出すことができずに、肺炎を起こすことがあります。これが「誤嚥性肺炎」です。特に、体力の低下した高齢者や脳血管疾患の患者様に多いといわれています。また、はっきりとした「むせ」がなくても「誤嚥」がおこっており、「誤嚥性肺炎」となることもあります。
●「摂食・嚥下障害」かな?と思ったら…
今回は、「摂食・嚥下障害」の症状の中の1つ「むせ」を取り上げて説明させていただきましたが、その他にも「飲み込みに時間がかかる(飲み込みにくい)」「食べ物をよくこぼす」「口の中に食べ物が残りやすい」等の症状もあります。症状も各個人により現れ方に差があります。 もし、「摂食・嚥下障害」かな?と思われましたら、早めの医師の診察・相談をお勧めします。